「秋田由利牛」の生産地である由利地域は鳥海山の麓にあり、中でも「秋田由利牛」の生産が盛んな鳥海高原は、昼夜の温度差が激しく、良質の牧草が豊富に育つ地域です。また、鳥海山の雪解け水は多くのミネラルを有しており、この地域の牛は栄養満点の牧草と水によって肥育されております。
さらに、秋田県が米どころとして知られるように、この地域では稲わらが豊富であり、また、米を飼料として牛に与えています。
このように、地域内においてほとんどの飼料を自給することができると言う恵まれた環境の下で、由利地域は秋田県内随一の子牛の産地として、その名声を誇ってきました。繁殖牛を非常に多く有し、年間約2,500頭もの子牛を出荷しています。つまり由利地域では、他地域のブランド牛とは異なり、繁殖から飼育、肥育に至るまで、地域内で一貫して行うことができると言うことです。
しかし、そもそも秋田県では牛肉を食べる文化が定着しておらず、「比内地鶏」等に代表されるように、鶏肉や豚肉を好んで食べる傾向が強く、その関係もあってか、出荷される子牛の7~8割が県外に流出し、多くが他の銘柄牛として肥育され、販売されているのが現状です。
秋田県全域における他の銘柄牛との関係をとらえてみますと、秋田県においては、県南で産出される「三梨牛」が最も古くから存在する高級ブランド牛であり、ロットが下がり、出回らなくなった現在でも、未だ県内では高級牛としての認識が強くあります。
昭和50年頃からは、秋田県畜産農業組合連合会と伊藤ハムとが県内の特定農家と契約をし、「秋田錦牛」と言う銘柄で牛肉の販売を行うようになりました。また、首都圏にも進出しており、特に県内の銘柄牛の中では東京都内において強い銘柄です。
その後、生産数の減った「三梨牛」に代わる県内の高級ブランド牛として、由利地域で育まれた牛が「由利牛」として、昭和58年から販売されるようになりました。また、平成の大合併に至る前の旧由利町においては、平成13年から17年まで大安売りを行い、各家庭レベルでの普及を図ってきました。更に平成14年には東京都内の卸業者と契約を結んだことを機に、百貨店の三越において「秋田由利牛」と言う銘柄で一定期間販売を行っていました。その後、ロットの少なさから安定供給ができず、三越での販売はしなくなりましたが、平成19年3月に「秋田由利牛」として地域団体商標を取得し、県内各地でイベントを開催し、「秋田由利牛」の地元定着を図ると共に、都内の高級スーパーに進出し販売を行うなど、「秋田由利牛」の振興を図っています。
他に、他の銘柄牛としては「秋田牛」と言う銘柄牛が存在します。こちらは全国農業協同組合連合会とプリマハムとが提携し、平成元年から販売を行っています。
※平成14年から東京都内の百貨店、三越にて『秋田由利牛』の銘柄で販売。その後、三越での販売は無くなるものの、平成19年3月『秋田由利牛』地域団体商標登録。